横浜地方裁判所 昭和25年(行)9号 判決
原告 佐原藤三
被告 神奈川県監査委員館豊次 外三名
一、主 文
本件訴を却下する。
訴訟費用は原告の負担とする。
二、事 実
本件訴の要旨は、原告は普通地方公共団体である神奈川縣の住民であり被告等は同縣の監査委員であるが、地方自治法第二百四十三條の二の規定に從い、原告は被告等に対して、
昭和二十五年二月七日に、
(イ) 神奈川縣知事内山岩太郎が違法な債務を負担している事実
(ロ) 同人が約一千万円の縣渉外土木監督雜費を詐取して横浜興信銀行に仮設人木村三男名義で預金している事実
(ハ) 同縣副知事豊原道也、同縣総務部長矢柴信雄が右(ロ)の事実につき知事内山岩太郎に協力していた事実
(ニ) 右三名が年々約三百万円に達する知事交際費を違法に支出していた事実
について
同年二月八日には、
(ホ) 同縣労働部職員片山茂が公文書偽造によつて約二十数万円の超過勤務手当を詐取せんとしつゝある事実について
それぞれその事実を証明する書面を添えて監査の請求をなし右普通地方公共団体の長たる知事内山岩太郎の退職、その職員たる豊原直也、矢柴信雄、片山茂の罷免および前記金員の使途明細を公表すべき旨の措置を求めたところ、被告等は同年二月二十二日原告の請求は監査の対象とならぬとして、監査を拒否した。
よつて、原告は地方自治法第二百四十三條の二第四項に基いて、
被告等は神奈川縣知事内山岩太郎に対して同人の退職を請求せよ。被告等は同縣知事内山岩太郎に対して、同縣副知事豊原道也、同縣総務部長矢柴信雄、同縣労働部職員片山茂の罷免を請求すべし。被告等は同縣知事内山岩太郎等が木村三男名義で横浜興信銀行へ預入していた預金通帳記載の金銭の出処ならびに使途明細を公表せよ。
被告等は昭和二十三年、四年度知事交際費の使途明細を公表せよ。
との裁判を求める次第であるというのであるが、地方自治法第二百四十三條の二によれば、普通公共団体の住民が当該普通地方公共団体の長、出納長もしくは收入役又はその他普通地方公共団体の職員について公金の違法もしくは不当な支出、違法な債務その他の義務の負担、財産もしくは営造物の違法な使用又は違法もしくは権限を超える契約の締結もしくは履行があると認めるとき監査委員に対し監査を行い当該行爲の制限又は禁止に関する措置を講ずべきことを請求し、監査委員がこれに應ぜずもしくはこれに應じたるもその措置に不服あるとき又は監査委員より当該行爲の制限又は禁止の請求を受けた当該普通地方公共団体の長がこれに應ぜず、もしくはこれに應じたるもその措置に不服なるときは裁判所に対し当該行爲の制限もしくは禁止又は取消もしくは無効もしくは当該普通地方公共団体の補てんに関する裁判を求め得べき旨規定したものであつて監査を請求した普通地方公共団体の住民が裁判所に求め得べきものは当該職員の違法又は権利を超える当該行爲の制限もしくは禁止等に限られ、原告の本訴において請求する各行爲が右列挙の各事項に該当しないことは一見明瞭であるのみならず、監査委員は右訴訟の被告たるべきものと解すべきものでないから、本訴はこれを許すべからざるものとし、これを却下すべく、訴訟費用は敗訴の原告の負担とし、主文のとおり判決した。
(裁判官 牧野威夫 荒木大任 樋渡源藏)